蛸壺の思うツボ

マンガを読むのが映画を観て生きる

90年代という表現の「愛と呪い」

 マンガ家ふみふみこの新作「愛と呪い」を読んだ。

 

現在、80年代の魅力が「面影」として10年代を支えているように感じる。

 それは80年代に青春を送ってきた現在の40代から50代のパワーが、社会の中心になっているところもあるが、ネット社会のフラット性もそれを享受できる要因である。

 

次々と80年代の名作がリブートされ、昇華されていく。

作家たちも、様々な形で80年代を表現していく。

 

80年代は懐かしい、だからこそ映える。

 

 40~50代が80年代の幻影を作るように、90年代に青春を送った現在の30代後半は、その時代を追憶せざるおえない。それは、現状の80年代感を十二分に楽しむ世代への嫉妬でもあるし、必然でもある。人格形成に多大な影響を与えた期間を、理解し受け入れ、他の世代に伝えないといけない。

 

90年代には「オウム」があり「震災」があり、「少年A」があった。

 

バブルが崩壊し、就職氷河期のあの頃の閉塞感は何であろうか。

 

「愛と呪い」では時代の大きな流れの中で、影響されていく主人公が描かれる。ふみふみこの半自伝的であるそうだが、この気持ち悪い世界から主人公は光を見つけることができるのであろうか。

 

 記憶の反芻はリハビリである。

 

それは毒を飲み、受け入れ、同化する。